音読とは何でしょう。また朗読とはなんでしょうか。
そして、その違いはどこにあるのでしょうか。
音読と朗読はどちらも、文章を声に出して読むことですね。
しかし、同じ声を出す音読と朗読では表現方法が違うのです。
音読は皆さんもきっと経験があるはずですよ。
音読が盛んなのは小学生の時期ですね。国語の文章を声を上げて読む、またはクラスで一斉に声を出して読んだ経験はあると思います。
音読は、文章を正確にはっきりと声に出して読むことです。
これに対して、朗読は文章を単に声に出して読むのではなく、その言葉のあるいは文章に秘められた情感を考えてそれを言葉に乗せて表現するのです。
この記事では、音読と黙読の特徴と違い、そして表現方法を絵本「でんでんむしのかなしみ」を例文としてご紹介させて頂きます。
音読・朗読の違いや表現方法は?
音読・朗読の違いは何でしょうか。そして、それぞれの表現方法はどう違うのでしょうか。
音読は書かれた文章を一つ一つはっきりと正確に声に出して読むことにポイントが置かれます。
それにたいして、朗読は文章の奥に潜む意味や情景をくみ取り言葉に感情を込めて表現することです。
音読は感情を交えずに言葉を正確に発音することにをポイントとするのに対して、朗読はその言葉にその文章の感情を醸し出して表現するという違いがあります。
では、普通どんな時に音読をし、またどんな時に朗読をするのでしょうか。その使い分けはどこにあるのでしょうか。
音読の表現方法は?
まず、音読は自分に向けられたものであることが多いと言えます。
普通、音読が対象とするのは基本的に音読するその人、ということが多いです。つまり、自分自身のために音読は行われます。
では、どんな時に音読するのでしょうか。
まず、第一に挙げられるのは、その文章に慣れるためということです。
文章を、十分に読んですらすら読めるようにしたい時、人は音読します。
その良い例が、小学校低学年の頃の国語の本読みです。よく、学校の宿題として国語の音読が毎日のように出されたりします。
音読をすることで、言葉そのものに慣れ、言葉を覚え、文章の流れなどが自然に身についてきます。
音読は、感情を込めることはせずに、言葉をはっきり読むことに重点が置かれます。
強弱をつけずに、読む速さも同じテンポで読むことに特徴があります。
普通、音読は自分を対象とした場合が多いのですが、大人数を対象にする場合もあります。
それは、テレビやラジオのニュース解説などです。
ニュース解説の場合、読み方は感情を交えず、言葉を聞き取りやすくはっきりと話すことが大切になります。
感情を交えず事実を正確に伝えるという表現方法にポイントが置かれます。
朗読の表現方法は?
では、朗読はどんな時にするのでしょうか。
音読が、自分自身を主に対象とするのに対し、朗読は他者を対象とします。
朗読は、聞き手がいてその聞き手に対して、向けられています。
音読は、感情は込めずに言葉そのものを正確に発することにポイントが置かれるのに対し、朗読は感情を込めることにポイントが置かれます。
その際、朗読する側は、文章を深く読み取りその背後にある情感を考え、それを声に乗せて表現するのです。
朗読の表現方法は、言葉に強弱をつけたり、読む速さを速くしたり、ゆっくりとしたりと変化があります。
朗読によって表現される言葉の情感は聞き手の心を揺さぶります。
朗読は、聞き手という他者を対象とし、詩や物語を朗読者の声を介して伝える一種の芸術・舞台作品といます。
音読と朗読の違いを解説!
音読と朗読、同じ文章でも音読で読むか、朗読という形式で読み上げるかによって感じ方はどう違うのでしょうか。
音読は、一つ一つの言葉を正確にはっきりと声に出して読む、という特徴があります。
それに対して朗読は、文章の流れから意味を深く感じ取り、言葉に想いを込めて声に出してすという違いがあります。
では、実際に音読と朗読の実践をしてみましょう。
新見南吉の「でんでんむしの かなしみ」というお話があります。
このお話を、短縮してご紹介いたします。
とても短いお話ですが、そのお話の意味を考えてみますととても深いものがある作品です。
この「でんでんむしのかなしみ」を次のように読んでみて下さい。
- 最初は音読で「でんでんむしのかなしみ」を読んでみましょう。
- 次に、朗読で「でんでんむしのかなしみ」読み上げてみて下さい。
実践して音読と朗読がどのように違うのか、自分自身で感じてみましょう。
新美南吉の絵本「でんでんむしのかなしみ」をご紹介!
まず、音読と朗読の表現方法の違いを、あなたに体験、実践して頂くために1つのお話をご紹介させて頂きます。
新美南吉の絵本「でんでんむしのかなしみ」を少し短縮してご紹介させて頂きます。
でんでんむしのかなしみ 文・新美南吉
(短縮してご紹介)
いっぴきの でんでんむしが ありました。
ある日 そのでんでんむしは たいへんなことに きがつきました。
「わたしは いままで うっかりしていたけれど、わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるでは ないか」
「このかなしみは どうしたら よいのでしょう。」
「わたしは もう いきて いられません」
でんでんむしは おともだちの でんでんむしに いいました。
すると おともだちの でんでんむしは いいました。
「あなたばかりでは ありません。 わたしの せなかの なかにも かなしみは いっぱいです」
そこで、でんでんむしは べつの おともだちの ところへ いきましたが どの ともだちも おなじことを いうので ありました。
とうとう でんでんむしは きがつきました。
「かなしみは だれでも もっているのだ。わたしばかりではないのだ」
そして この でんでんむしは もう、なげくのを やめたので あります。
実践編・「でんでんむしのかなしみ」を音読してみよう!
まず、この「でんでんむしのかなしみ」を音読してみて下さい。
1回、音読してスラスラと読める人と、読めない人がいると思います。
では、2回、3回、・・・と音読してみて下さい。
音読は、感情を込めずに言葉をはっきり正確に声に出して読み上げることです。
回数を重ねることで、段々と言葉に慣れスラスラと読めるようになりますね!
中には、暗記してしまう方もいらっしゃるでしょう。
実践編・「でんでんむしのかなしみ」を朗読してみよう!
では、次にこの「でんでんむしのかなしみ」を朗読してみて下さい。
そうすると、すぐには朗読出来ないことがわかりますね。
音読は、すぐにでもできます。しかし、朗読となるとそうはいきません。
朗読は、その文章の背後にある意味を深く感じ取り、その想いを声に出して表現することです。
あなたは、まず、どうしますか?
この「でんでんむしのかなしみ」の文章を、黙読して、自分の頭の中で考えますね。
このお話は、とても短い文章ですが内容はとても深いものがあります。
この内容の情感を深く読み取るために、私たちは自分の人生経験を顧みて照らし合わせるのです。
でんでんむしのかなしみ、でんでんむしが悲しみがいっぱいつまっているという、
このことから、自分の事を振り返って悲しかったことを思い出してみる、
でんでんむしは 自分の悲しみをお友達のでんでんむしに話しに行く
すると、お友達の でんでんむしも 自分悲しみがいっぱい詰まっていると言う
私たちは、自分の身近な人のことを想い浮かべてます。
そして、みんな悲しみはあるのだと 気が付く
でんでんむしは、最後に
「かなしみはだれにでもあるのだ 自分だけではないと悟って もうなげくのをやめたのであります」
とありますが、そこを、どう読み取るでしょうか?
ああ、悲しい・・とさらに嘆くのか?
それとも、自分だけではないと強く生きる決心をするのか?
それを、どう とらえるかによって声の感じが違ってきます。
やはり、人間は誰しも明るく幸せな方向を向いていきたいですから、力強く生きる決心の方を選びたくなりませんか?
そうすると、最後の 「もう かなしむのを やめたのであります」
は、きっぱりと した 心持で言葉にするという表現方法が考えられます。
そこに、悲しみを乗り越えていく強さと、お互いを思いやる心が生まれてきませんか?
朗読は、自分の奥にある似たような感情を呼び起こし、言葉にその想いを含ませて表現します。
朗読する側の感情のこもった言葉は、聞き手の心に響き揺さぶります。
一つの作品を、朗読する側と聞き手が共有し感情の連帯感が生まれます。
朗読は、他者を相手にし、詩や物語を言葉に感情を込めて表現することで聞き手との間に感動が湧きおこります。
人の感情を揺さぶる声の芸術と言えるでしょう。
音読・朗読の違いと表現方法を絵本「でんでんむしのかなしみ」を例文にご紹介!まとめ
音読・朗読の違いは、音読は対象が主に自分自身であることが多いのに対して、朗読の対象は他者であり聞く側に向けられているということで、言葉を正確にはっきり声に出すことが大切です。
音読は感情を込めずに読み上げます。強弱をつけずに同じテンポで読み上げます。
音読は自分を対象としていますので、言葉、文章になれるには、まず音読です。
朗読は、言葉に感情を込めて表現しますが、いきなり朗読は難しいです。
まず、音読、または黙読して、内容を把握して、音読し言葉の流れがスムーズになったら、朗読します。
朗読と音読の表現方法の違いは、音読は言葉を正確にはっきり発するのに対し、朗読はその文章の奥にある言葉の意味を深く読みとって想いを言葉に乗せて表現します。
ですから朗読は、全ての言葉を正確にはっきりと発するのではなく、内容によっては声に強弱をつけたり、読む速さにも変化をつけたりすることもあります。
朗読は、内容を深く読み取り言葉に感情を込め、聞き手に対して向けられる舞台芸術といえます。